日雇いバイトの思い出
- megumim1219
- 7月30日
- 読了時間: 3分

人生を振り返り、いろんなアルバイトをしてきたなあとふと思う。
決して仕事ができるタイプではない私は、数々の現場で迷惑をかけてきた。
「返事だけはいい」「元気だけはある」。でも、いかんせん「使えない」。
これが、社会から見た私の一貫した評価だと思う。
日雇いバイトもたくさんしてきた。
互いに初めて同士。そこには必ずドラマがある。
丁寧に対応してくれる人もいるし、「どうせ今日しか会わないし」と雑な対応をされることもある。
結婚式場の配膳アルバイトをしたときには、初めて行った現場なのに、
勤務開始10分で「あんたさ、何回言えばわかるんだよ!」と怒鳴られたことがあった。
「えっ。初めましてなんですが……」と思ったけれど、もしかしたら私にそっくりな人が先週来たのかもしれない……と思い直す。
一度そう思ったら、私の性質上、もう妄想が止まらない。
私のドッペルゲンガーは、私と同じように先週ここで働き、私と同じように仕事ができなくて怒られたのだ。
ああ、愚かな我がドッペルゲンガー。あなたは、今週はどこの現場で怒鳴られているのでしょうか……?
あと、こんなこともあった。
たしか33歳の時、同じく日雇いバイトでの休憩時間。
狭い休憩室で、バイトリーダーっぽい学生の男の子(大学四年生だと本人言っていた)が、大学一年(本人が言っていた)の男の子に、
「お前さ、若いうちに海外は経験しといたほうがいいよ。おっさんおばさんになってからじゃ遅いから。マジでそう思う。俺なんかもうオジさんだからさあ、マジもっと世界見とけばよかったと思うよ。人生って短いから」
と語っている現場に居合わせた。
私を含め、その場にいた日雇いバイトの人たちは、みんな、あの学生さんよりずっと年上だったと思う。
べつに、彼は悪くない。何も悪いことは言っていない。
なのに。なんか、気まずかった。
大人たちは、みんな黙ってお茶を飲んでいた。
透明人間になりたい。
というか、もう彼にとって私たちは透明人間なのかもしれない、とちょっと思った。
丸一日一緒に働いて、お疲れ様です〜とタイムカードを切った。
帰りの駅で見たバイトリーダーは、ごく普通の学生さんに見えた。さっきまで「バイトリーダー」だったのに。
横を通り過ぎる時会釈したけれど、もう私を覚えていないようで、「?」と眉根を寄せられた。
いや、もう忘れてるんかい!
うう、ちょっぴり悲しい。さっきまで連帯感のあるチームの仲間だと思っていたのに……。
総武線がホームに滑りこんでくる。私もバイトリーダーも静かに乗りこむ。
彼がどこで降りたのかは、わからない。
私は今日1日だけ別の人間になったかのような気持ちで、電車に揺られた。
最寄り駅で降りた。
ようやくリアルな世界に戻ってきた気がした。




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